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◇ 企業の安全配慮義務
 経済不況の影響がいまだに続く昨今の企業を取り巻く状況においては、人員削減による1人あたりの労働時間の増加等により、被用者は肉体的な疾患を患うとともに、精神的にも疲弊し、ついには自ら命を絶ってしまうというような事態も生じています。代表的な例としては、平成3年に起こった大手広告代理店の事件が挙げられます。

 この事件は、大手広告代理店に入社したAさんが、長時間残業・深夜勤務・休日出勤などの過重労働によりうつ病にり患し、自宅で自殺したという事件です。

 この事件で最高裁判所は「使用者は、その雇用する労働者に従事させる業務を定めてこれを管理するに際し、業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないよう注意する義務を負う」として、会社が労働時間を軽減させる具体的措置を取らなかったことを理由に不法行為による損害賠償を認めており、事実上、会社側に安全配慮義務があることを認めたものといえるでしょう。

 ここで、安全配慮義務とは、一般的に使用者が作業場所、施設、器具などの設置・管理や業務の管理などについて、労働者の生命及び身体等を危険から保護するよう配慮する義務であり、労働契約に付随して認められるものであるといわれています。このような安全配慮義務は、機械や設備などの物質面での安全環境から出発したものでしたが、前記の最高裁の判断によって過労に起因するうつ病による死亡などの精神衛生面においても妥当することが認められるようになったといえます。会社側は、この安全配慮義務を欠いたことを理由に多額の損害賠償を請求される場合もあります。このような損害賠償の支払は、会社にとって大きな負担になりかねません。

 そのような事態を避けるためにも、日頃から従業員の精神衛生に気を配り、うつ病などの精神疾患を事前に予防することが大切なことはもちろんですが、安全配慮義務を尽くすよう努力することは、従業員の事業遂行の効率化にもつながり、ひいては会社の業績向上にもつながるのです。すなわち、従業員の精神状況に応じて就業場所の変更、作業の転換、その他施設・設備の設置又は整備等の適切な措置を採ることは、物質面のみならず、精神面においても従業員が働きやすい環境を整えるということであり、それにより従業員の仕事に対する意欲も向上し、最終的には会社の利益向上にもなるというわけです。そのためには企業の人事部門が人財を把握し、従業員の精神面についての情報を収集し、それを分析し、適切に対応するシステムを確立していくことが必要だといえるのではないでしょうか?

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